みなさん、「首都圏外郭放水路(しゅとけんがいかくほうすいろ)」って聞いたことありますか?埼玉県春日部市にある、この施設は、豪雨による洪水から私たちを守るために作られた、世界でもトップクラスの巨大地下施設です。その壮大さから「地下神殿」とも呼ばれ、実は見学もできるんです!
先日、当社が所属している文京区産業協会の施設見学会で、この首都圏外郭放水路を見学してきましたので、建設の背景や仕組み、そして現地での楽しみ方をご紹介いたします。
首都圏外郭放水路は、埼玉県に流れるいくつかの川(綾瀬川・中川・古隅田川など)が豪雨で増水したときに、水を地下に逃がして洪水を防ぐための施設です。
施設の中でも特に印象的なのが、地下50メートルにある「調圧水槽(ちょうあつすいそう)」。幅78メートル、奥行き177メートル、高さ18メートルもある巨大空間に並ぶ59本の柱は、古代ギリシャやエジプトの神殿を思わせる荘厳な雰囲気を醸し出しています。この光景から「地下神殿」という愛称が生まれたのも納得です。
日本は昔から川が多く、大雨が降るとすぐに洪水になる地域もありました。特に都市部ではコンクリートやアスファルトが多いため、水が地面にしみ込まず、洪水の被害が深刻化しています。そこで、洪水対策として1982年に首都圏外郭放水路の計画がスタートし、1993年に建設が始まりました。
完成までには約13年かかり、2006年についにお披露目となりました。この間に使われたお金はなんと2300億円!それでも毎年のように発生していた洪水被害を大幅に減らせたと考えると、必要な投資だったといえます。
首都圏外郭放水路の最大の意義は、言うまでもなく洪水対策です。都市化が進み、地表の保水能力が低下している現代において、このような大規模な地下放水路の存在は、都市の安全を守る上で極めて重要です。この施設があるおかげで、周辺地域では洪水のリスクがぐっと下がりました。特に、豪雨のたびに家や道路が水に浸かっていた地域では、安心して暮らせるようになったという声がたくさんあります。
この施設は、日本の土木技術の粋を集めた傑作と言えます。巨大な地下空間を掘削し、精密な水流制御システムを構築する技術は、世界的にも高く評価されています。
首都圏外郭放水路の仕組みを簡単に説明すると、次のような流れで洪水を防いでいます。
首都圏外郭放水路では、一般の方々向けに見学会を開催しています。これは単なる施設見学にとどまらず、防災インフラの重要性を体感できる貴重な機会となっています。
大人気の地下神殿「調圧水槽」の見学に加え、非公開だった作業用通路やポンプ室、ガスタービン部、インペラ部などを開放し、4コースが設定されています。
地下神殿「調圧水槽」の見学を約55分に凝縮したコース。
コンシェルジュによる施設概要説明と自由見学時間があります。
「調圧水槽」は、とにかく巨大!高い柱が立ち並ぶ様子は圧巻で、自然に「おお~!」と声が出てしまいます。SNS映え間違いなしの場所です。
キャットウォーク(作業員用通路)を歩き、立坑内の階段を途中まで降りていくコース。深さ70メートルの迫力を存分に楽しめます。
首都圏外郭放水路の心臓部であるポンプをメインに構成したコース。
地下神殿「調圧水槽」とポンプ室内を見学し、国内唯一のポンプ設備の機能や役割、迫力の特殊ガスタービンの機械部まで見学できます。
調圧水槽最奥部にある巨大なインペラ(羽根車)を特別装備(長靴とヘッドライト付きヘルメットを着用)で見学するコース。
第一立坑から調圧水槽、排水ポンプのインペラ(羽根車)へと水の流れが実感でき見どころ満載です。
首都圏外郭放水路は見学予約が必要ですが、公式サイトからも簡単に申し込めます。アクセスは電車と徒歩で行けるので、気軽に訪れることができます。周辺には春日部ならではのおいしいグルメスポットもあるので、観光気分で楽しめますよ。
〈見学の際の注意点〉
施設の性質上、天候の急変により稼働する場合があります。そのため、やむを得ず見学会が中止されることがあります。見学を計画する際は、事前にホームページで最新情報を確認することをおすすめします。
首都圏外郭放水路は、現代の技術と知恵が結集した、まさに「現代の神殿」と呼ぶにふさわしい施設です。機会があれば、ぜひ一度訪れて、その壮大さを体感してみてください。きっと、防災インフラに対する理解が深まり、新たな発見と感動を得ることができるはずです!
参考:日本が世界に誇る防災地下神殿 首都圏外郭放水路HP